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映像を極め、社会課題を解決していく

2024年5月28日

情熱の源泉

カメラをはじめ、映像機器メーカーとしてのイメージが強いキヤノンだが、実はキヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ) グループは、長年培ってきた技術力と表現力、それらをプロデュース力で掛け合わせた体験価値創造ソリューションを、国や自治体と連携しながら提供している。例えば、東京都大田区との取り組みでは、公民連携のSDGsプラットホームの推進について分かりやすく伝えるPR動画を制作。その制作指揮を執ったのが、キヤノンMJ 自治体プロジェクト推進室の森田 修三である。

映像コンテンツの制作がエンターテインメント領域で行われるケースが多い中、キヤノンMJの同部門では、「伝統文化の伝承」「スポーツ文化の支援」「自然の魅力の訴求」といった「社会課題の解決」に特化している。そうした仕事に魅力を感じ、“映像制作のスペシャリスト”として精力的に活動する同氏の“情熱の源泉”に迫った。

自治体の課題を“映像”で解決するプロフェッショナル

キヤノンマーケティングジャパン 自治体プロジェクト推進室 森田 修三
キヤノンマーケティングジャパン 自治体プロジェクト推進室 森田 修三

「視聴者に、その場にいるかのような疑似体験を提供できること、テーマを“物語”として伝えられること。それが“映像”というメディアの大きな魅力です。こうしたポイントは多くの方が感じていることかと思いますが、そこに加えて自分が強く感じていることは、“社会課題の解決につながる”ということ。そんな映像の力に魅せられ、映像を極めたいと、これまで走り続けてきました」

このように語る森田が所属する自治体プロジェクト推進室は、クリエーティブ制作のプロ集団。現在、主に国や自治体が抱える課題を「映像」というソリューションで解決している。

「CM制作の経験が豊富な者、プロモーション戦略を強みとしている者、イベントでの写真展示を得意としている者……タレントぞろいです。そうしたメンバーたちが連携して、“どうにか課題を突破していこう、驚かせてみせよう”と、楽しみながら新しいことに挑戦しているのが、この部署の魅力だと思います」

キヤノンマーケティングジャパン 自治体プロジェクト推進室 森田 修三

このように話す森田自身もまた、長らく海外で活躍してきた映像制作のスペシャリストである。

森田がキヤノンMJに入社したのは2023年の春。最初に関わったのが、日本のまつり探検プロジェクト「まつりと」である。これはキヤノンMJが文化庁「地域の伝統行事等のための伝承事業(公開支援)」に参画して立ち上げたもので、映像制作や写真撮影、オンラインによる情報発信など、全国47都道府県の155件の祭りを多面的にサポートした。入社間もない森田も、北海道、岩手、高知……と、各地の伝統行事を映像記録として残すべく奔走した。

「地域の文化や生活の礎とも言える祭り。今、その存続が危ぶまれる地域も少なくありません。そうした状況や課題の解決に貢献したいと始まったのが『まつりと』です。私自身も実際に現地に足を運びましたが、その土地ならではの風土や歴史を感じることのできる魅力的な祭りばかりでした。例えば、北海道の『佐女川(さめがわ)神社みそぎ祭』は特に印象的で、 “一年の豊漁・豊作を祈願するために4人の若者が3日間にわたって神社に籠もり、昼夜問わず何度も冷水を浴びて身を清める”というものでした。こうした伝統の実態や特殊性、祭りにかける地元の方々の想いを記録として残すことには、とても大きな価値があると思います」

現在も森田は、「まつりと」とは別になるが、栃木県および千葉県と、祭りの映像記録プロジェクトを進めている。

「常に各自治体や保存会の希望を汲みつつ、その祭りの“最もいい見せ方”を試行錯誤しながら提案しています。制作する内容に最も適した映像制作会社とも連携して、地域に密着した映像コンテンツを作れるのも私たち自治体プロジェクト推進室の強みですね」

 「まつりと」イメージ
まつりとイメージ

「映像を極める」「とりあえずやってみる」― 世界中をめぐるための二つのエンジン

キヤノンマーケティングジャパン 自治体プロジェクト推進室 森田 修三

北海道北広島市で生まれ育った森田は、根っからの野球少年。中学を卒業すると、地元の強豪校・札幌日本大学高等学校に特待生として入学した。俊足堅守の外野手として活躍し、高校2年の春には選抜甲子園にも出場した。

野球漬けの高校生活を終えた後は、「生きていく上で役に立つことを学びたい」という理由で、札幌学院大学の法学部に進学。肩を壊した影響で野球ができなくなったこともあり、「1日1本、映画を観る」という生活を続けた。

「子どもの頃から映画が好きで、1日3本観ることもありました。その中で、キューバのミュージシャンたちの人生に迫った『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』というドキュメンタリー映画に、ものすごい衝撃を受けました。それをきっかけに、“自分も世界で映像制作に携わりたい”と思うようになりましたね」

もともと何事にも一途で、実直な性格。大学卒業後は、日常会話もおぼつかない英語力のまま、カナダの映像制作会社に入社。そこで3年ほど、主に撮影担当として世界遺産の撮影に携わった。その後はオーストラリアに移り、ドキュメンタリー映画や企業映像の制作を担当。以降、会社所属とフリーランスという立場を繰り返しながら世界中をまわり、ディレクター、プロデューサー、映像コーディネーター……など、さまざまな立場で映像制作に関わり、経験を蓄積してきた。

「ペルーのマチュピチュでは強盗にパソコンを奪われましたし、南アフリカではパスポートを盗まれました。ほかにも結構、大変な思いもしましたが、“やってみたら、なんとかなる!”というのが私の信条。大きな壁にぶつかったら、方向転換していけばいい。最初から綿密な設計図を作って、その通りにしようと思っても、あまりうまくいかないですよね。とりあえずスタートしてみて、やりながら考える。それが大事だと思います」

若手の頃は、ハードワークを強いられもした。さまざまな厳しい経験をしながらも、「一度も映像業界から離れようと思ったことはない」と森田は笑顔で語る。

「確かに肉体的につらい時期もありました。でも、そんなときも“映像をやりながらお金もらえるって、最高じゃん”としか思っていませんでした(笑)。その想いはずっと変わっていません。大変な思い出も、今は笑い話です。もちろん、映像業界がすべてつらいところというわけでもないですよ。たまたま自分がそういう経験をしてきたというだけで。とはいえ、これまでを振り返ってみると、絶望するほどの大きな失敗を、若いうちにもっと経験しておけば良かったと思いますね。挫折は、絶対、のちの強みになる。どんな厳しい状況に置かれても、今まで続けてこられたのは、“映像を極めたい”という想いが、やっぱり私の中に強くあったからだと思います」

社会に大きなインパクトを与える“映像の可能性と魅力”をこれからも追求していきたい

キヤノンマーケティングジャパン 自治体プロジェクト推進室 森田 修三

そんな森田は、なぜ新たな挑戦の舞台としてキヤノンMJを選んだのか?

「やはり世界中の映像クリエイターがキヤノン製品を愛用していますし、特に若手の頃、名だたるプロフェッショナルたちが『EOS 5D』を使っている姿を見て、キヤノンに憧れがありました。そんな世界的企業が今後さらにコンテンツ制作に力を入れていくということを知り、自分も大きな仕事に携われるんじゃないかと考えて、入社を決めました」

目下、森田が中心となって進めているのが東京都大田区の魅力発信プロジェクトである。これはSDGsを軸とした大田区のさまざまな取り組みを、多くの人に映像を通して分かりやすく伝えるというものだ。演出家をはじめ、多くのトップクリエイターと連携して、森田は制作を指揮している。

森田 修三が手掛けたプロジェクト

「私たちの強みは、自社プロダクトや最新映像技術など、独自の技術力をベースに企画からコンテンツをつくれること。さらに実際の制作段階では、さまざまなジャンルのクリエイターとも連携して、コンテンツの完成度を高められます。またマーケティング企業として築き上げてきた営業ネットワークも、キヤノンMJとしての大きな強みです。お客さまの困りごと、ご要望を引き出し、それに適ったコンテンツを提供できる環境が整っています」

では、森田自身の強みは、どこにあると考えているのだろうか?

「本当に多種多様な映像制作に携わってきたので、引き出しの多さには少し自信があります。お客さまとの打ち合わせの際にも、課題解決につながる企画内容はもちろん、予算やスケジュールなどの条件も含めて、“このケースだと、このぐらいの撮影規模で、この日数が必要”といったように具体的な提案ができます。あとは、人脈の広さでしょうか。やっぱりこの業界は“人脈が宝”。困ったとき相談できる人が多い、というのは自分の強みの一つですね」

経験豊富な森田の後ろには、優秀なクリエイターたちがさらに控えている。依頼する側にとって、これほど心強いことはない。

強みに加えて、日々仕事をしていく上で大事にしている考え方を聞いたところ、しばらく無言で考え、「結局これですね(笑)」とポーズつきで答えた森田
キヤノンマーケティングジャパン 自治体プロジェクト推進室 森田 修三

最後に、これから挑戦したいことを聞いてみた。

「キヤノンMJを、新しいこと、面白いことに挑戦したいクリエイターが、どんどん集まってくる場所にしたいですね。長年経験を積んできて、やっぱり映像には大きな力があるなと常に感じています。観る人に実際にその場にいるような感覚を与えることはもちろん、撮影の仕方によってはそれ以上の臨場感や没入感を覚えてもらえるような作品にすることもできます。今後も技術の進歩によって、さらに大きな体験価値の創造も可能になりますし、社会課題にも大きなインパクトを与えられるとも考えています。だからこそ、そこにコミットして“映像を極めていくこと”に私はやりがいを感じています。キヤノンMJでは大きなプロジェクトに携わり、前例のない社会課題に立ち向かえる機会も多くあります。そんな環境で、強みを持った多くの仲間たちとともに、楽しみながら多くの社会課題を解決していきたいですね」


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