「お客さまにとって最高の伴走者でありたい」
地域の中小企業に寄り添い続けるアプリケーションエキスパートの覚悟
2024年10月21日
さまざまな課題解決に欠かせない存在であるIT。多くの企業で活用が進む一方で、専門的な知識を持った人材がおらず、自社の課題解決に最適なソリューションを選び活用することができないという悩みを抱える企業も少なくない。
キヤノンMJグループのキヤノンシステムアンドサポート(以下、キヤノンS&S)は、そうした地域の中小企業に寄り添い、専門的な知識や技術をもって最適なITの計画策定から、機器の選定・導入・運用・保守、そして教育までをトータルでサポートし、経営課題の解決を支援している。
同社のビジネスアプリケーション本部に所属し、北陸エリアで活躍する山田 奈津子は、社内外から多くの信頼を集めるアプリケーションエキスパート(以下、AE)だ。絶えず知識を磨き、お客さまに伴走し続ける山田は、ある覚悟を持って仕事にのぞんでいる。それは何か。山田の情熱の源泉を探った。
「ビジネスの根幹となるIT部門をまるごと預けていただいている」AEだからこそ提供できる価値
「コロナ禍をきっかけに、あらゆる業種でデジタル化・オンライン化が急速に進みました。しかし、私が担当している北陸の中小企業のお客さまは、従業員数50名以下の規模が多く、社内に専任のシステム担当者がいらっしゃらないところも少なくありません。お話を伺うと、ITに関する新しい情報をキャッチアップすることが難しく、世の中の流れから取り残されてしまうのではないか、という漠然とした不安を抱えていらっしゃる経営者・業務担当者の方も多くいらっしゃいます」
こう話す山田は、入社以来約20年間、金沢営業所で、石川・富山・福井県の北陸エリア3県を担当するAEとしてキャリアを重ねてきた。AEは中小企業のお客さまに対し、基幹業務系ITソリューションの提案から導入支援、導入後のサポートまで一貫して担当するプロフェッショナル職だ。基幹業務と一言で言っても、その内容は勤怠管理、人事労務、給与管理、販売管理や会計管理など幅広い。
「近年は課題がより複雑化してきていると実感しています。実際、お客さまのオフィスに伺って普段の業務フローを詳細にヒアリングさせていただくと、お客さまが認識されていた課題とは別のところに、解決すべき本質的な課題が隠れていることも多いです。
それぞれのお客さまに最適なソリューションは何かと常に考えた上で、多くのメーカーが提供するアプリケーションの中から、メーカーの枠組みを超え、複数のアプリケーションを連携させてご提案することもあります」
AEは自社製品に限らず複数のメーカーのさまざまなアプリケーションに精通しているため、アプリケーションありきではない、お客さまの目線に立った最適なソリューション提案を可能とする。そして、ITに関する相談相手として、一貫してお客さまに寄り添うことができるのもAEの強みだ。山田は、「お客さまのIT部門をまるごと預けていただいている」と捉える。
「一つひとつの業務改善やトラブル対応はもちろん、ITがビジネスの進化において欠かせない今、中長期的な視点に立ち、お客さまの成長のために必要なことは何かを見極め、ご提案していく姿勢が求められていると強く感じます」
「地域に密着したAEであれば、リモートや対面で迅速にサポートし、常にお客さまに伴走することができます。それが、私たちAEがご提供すべき重要な価値の一つだと考えています。AEとして、『お客さまのビジネスの根幹となるIT部門を預けていただいている。自らの提案でお客さまの成長を加速させていく』という覚悟を持って日々取り組んでいます」
また、「お客さまを不安にさせない」ことも山田の信条だ。ベンダーによっては、導入サポートが動画によるレクチャーのみであったり、問い合わせ先がアプリケーションごとに分かれていたりするケースもあり、そうしたことで生じる不安の積み重ねが、専任人材がいない企業にとってIT活用の壁ともなる。
お客さまに伴走するために、「最高のスキルレベル」へ常に挑む
ただ、一言で「お客さまに伴走する」と言っても、容易なことではない。お客さまの本質的な課題に対して適切な提案をするには、取り扱う複数のメーカーのソリューションやITの専門知識はもちろんのこと、お客さまの業種や事業に関する知識、そして経理、給与、人事、労務、法務、経営など広範な業務知識を学び続けることが欠かせないからだ。
そのために、山田はキヤノンS&Sで取り扱っている各ベンダーのさまざまなアプリケーションに関する知識をほぼ網羅しており、ベンダーが認定するインストラクター資格はもちろん、社内認定資格も含めると、取得した資格は、およそ100にも上る。
加えて、キヤノンS&Sが設定する社内の「スキルレベル制度」でも、2024年現在、最高レベルに認定されている。実務経験や保有スキル、アセスメント、資格といったすべての要素を満たす場合のみ認定される難易度の高い制度だ。
実はプライベートでは3児の母。仕事と子育ての両立で忙しい日々を過ごしながらも、子どもを寝かしつけた後や通勤中の時間を活用して学び続けているという。多忙を極める日々の中、なぜ山田は常に高いレベルを目指し続けることができるのだろうか?
「もともと家族が教師で、常に目標に向かって努力する姿勢を教えられた影響もあり、小さい頃から何かに挑戦することが好きで苦にならないというのもあるのですが(笑)、一番のモチベーションは、お客さまに直接お会いすることでいただく“力”です。
例えば、総務の実務を担当されている方にお会いすると、給与業務を行う月末は休めなかったり、年末調整の時期が近づくたびにプレッシャーを感じていたりと、“頑張って”働いている方が少なくありません。私と同じように、子育てをしながら働く方も多くいらっしゃいます。そのような状況を少しでも改善したくソリューションをご提案し、導入していただけた後、皆さまから『業務が楽になった』『時短になった』『ありがとう』という言葉をいただけた時に一番のやりがいと喜びを感じます」
給与業務の工数を半分に削減。プロに認められる知識を持って「総務部門のあるべき姿」をITで実現する
そんな山田が、近年特に心に残っているプロジェクトがある。石川県に拠点を置く製造業のお客さまの人事や勤怠、給与情報を一元化するというものだ。
「そのお客さまは人事・給与に関する業務も担う総務部門の方で、ご相談があった時はすでに労務管理システムで、勤怠の打刻と労働時間集計を行っていらっしゃいました。しかし給与計算はそのシステム上ではできず、勤怠の集計データをExcelに転記しUSBメモリーに保存して、給与計算の代行会社に手渡しされていたのです。工数がかかる上に、セキュリティ面にも課題を感じられており、以前から付き合いのあった当社にご相談いただきました」
ソリューション選定が完了したころ、前任者の異動にともない、山田が導入から担当を引き継ぐこととなった。
「ご相談くださった総務部長さまは、『人の手を介す事務作業を極力無くし、限られた時間と人員で、高付加価値を生み出すことが必要だ』とお考えでした。慢性的な人手不足や法改正への対応などで業務量は年々増大していたのです。お客さまの描く『総務部門のあるべき姿』を理解し、その実現を目指して共にプロジェクトを進行していきました」
システム導入で仕事のやり方が大きく変わるため、現場の方の不安も大きかった。不明点は一つひとつデモンストレーションなどで説明しながら、その不安を解消。つまずきそうな点は、あらかじめポイントをまとめた資料を作成するなど、きめ細かなフォローも行った。途中で不測の事態も発生したが、お客さまと連携し無事に新システムに切り替えることができたという。導入後は、勤怠・給与明細・労務管理・人事管理までデータを連携。勤怠を締めれば自動で給与計算ができる環境となり、一連の給与業務に要する日数は、5日から2.5日と半減した。
「給与管理は、間違いや遅れがあってはならないため、総務の方のご負担やプレッシャーは相当なものです。今回、単に業務に要する時間を短縮できただけでなく、現場に精神的余裕がもたらすことができたことに、多くの喜びの声をいただきました」
プロジェクトの中では、思いがけないうれしい出来事もあった。総務の仕事に精通する山田の仕事ぶりを見たお客さまから、「総務の経験があるのですか?」と問われたのだ。
「勉強すればするほど、日々、経理や総務の方々の知識、経験の深さを実感し、心から尊敬の念を抱いていました。そのようなプロフェッショナルの方々に、業務知識を認めていただけたと感じ、AEとしてお役に立てたことが本当に嬉しかったです」
お客さまが描く未来を実現するため、プロフェッショナルに認められる“真のプロフェッショナル”になる。そのために必要なことは何か、自分は何ができるのか、を常に追求し続ける。山田のこうした姿勢が、お客さまに安心感をもたらし、信頼を集め続けることにつながっている。
後輩AEの育成を通して、より多くのお客さまの進化を支えたい
お客さまからいただける感謝の言葉が、次の成長につながる。そんな経験を後輩にも積んでほしいという気持ちから、山田は全国のAEに遠隔や実地で指導を行う「広域支援」にも力を入れ始めている。
「私が新人だった時代は、まだAEも少なく、私一人で取り組むことも多かったのですが、お客さまからのニーズが多様化・複雑化する昨今、自分一人の力で解決できることには限りがあると感じます。お客さまの課題をより多く解決する一番の近道は、後輩たちにチャレンジできる機会を提供し、その喜び、達成感をたくさん経験してもらうことだと考えています」
自らのスキルを磨き続けるとともに、後輩AEの育成を通して、より多くのお客さまの進化を支えたい。その目標に向けて、山田はまた新たな挑戦を進めていく。