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70万人の年末調整業務をまるっと引き受けている⁉
その裏側、BPOサービスの現場担当者に聞いてみた

皆さん、BPOってご存じですか? BPOは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、ごく簡単に言うと、会社の業務を外部委託すること。近年は、特に人事や経理、総務、情報システムなど、いわゆるバックオフィス業務においてBPOサービスを利用する会社が増えています。

今回はそんなBPOサービスのうち、お勤めの方には年の瀬を前にした恒例行事とも言える年末調整業務に注目。その舞台裏では、どんな人たちが、どんな作業を行っているのでしょうか。約120社70万人分の年末調整業務を一手に引き受ける“年末調整のプロ”、キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループの(株)キュービーファイブ 秋山一城さんと北野友理さんにお話を聞きました。

膨大なリソースが求められる年末調整業務

左から、北野さん、秋山さん

ー  今日は、年末調整の舞台裏についていろいろ教えてください。早速ですが、そもそも年末調整って何ですか?

秋山:所得税の過不足を調整する手続きのことです。従業員の方は、毎月の給料や賞与からの“天引き”で所得税を納めていますが、実はこのときの納税額は、会社が概算したもの。正しい納税額ではありません。そこで、その年の所得額(収入)が確定した時点で所得税を計算し直して、納入済みの税額とのズレを解消します。その作業が年末調整です。

ー  なるほど。だから、どの会社も所得額が確定する年末に行うんですね。

秋山:ええ。年末調整は、多くの従業員を抱える会社にとってはまさに一大プロジェクトです。他部署と協力したり、専用の作業スペースを確保したり。場合によっては、派遣の方を雇ったりしながら、従業員からの申請内容を何日もかけてチェックして……と、経理のご担当者を中心に膨大なリソースを割かないといけません。

北野:そこで私たちの出番なんですよね。キュービーファイブは、20年以上にわたって人事給与業務のBPOサービスを提供してきました。2022年には、約120社70万人分の年末調整業務を受託。業界でもトップ3に入る数字です。

ー 70万人……! もはや都市レベルですね……。

北野:はい、初めて仕事をしたとき、あまりの数に圧倒されました!

毎年、仙台に数百名のスタッフが集結!

ー 続いて、実際にお二人がどんな仕事をしているのか教えてください。

北野:それでは、年末調整業務の大まかなスケジュールからお話ししますね。まず、お客さまから「年末調整をお願いしたい」というご相談が増えてくるのが、毎年6月頃。7月に契約を交わして、だいたい8~9月にかけて具体的なスケジュールや業務の進め方について打ち合わせをしていきます。

ー 半年前から……想像よりもずっと早い!

北野:10月に入ったら作業拠点の仙台に移って、集まっていただいたスタッフの皆さんの研修や作業場所の準備を進めます。それで10月末あたりから所得税の控除申請に必要な各種証明書類が作業場に届き始めるので、順次処理していって、12月末までに一連の作業を終えるという感じです。

仙台に設置する年末調整センターでのスタッフさんたちの研修風景

ー なぜ仙台に拠点を?

北野:やはり東京近郊だと、家賃や人件費が割高だからです。かといって、あまりにも人口が少ないとスタッフが集まらない。東京からのアクセスも含めて、そうした諸条件のバランスがいいのが仙台です。

秋山:仙台では毎年10月から翌年1月末頃にかけて、大きなオフィスビルを数フロア借りています。そこに200~300人ほどのスタッフを集めて、作業チームを編成する。その期間、私たちを含めて6名ほどの社員がほぼ缶詰状態になりますが、それだけでは管理しきれないので、社員とスタッフの間に立つサブリーダーを協力会社から派遣してもらっています。社員1人につき、2~3人のサブリーダーがついて、その下でスタッフの皆さんに作業をしてもらうという体制です。

ー すごい規模ですね! スタッフの方への研修は、どんなことをしているんですか?

秋山:マニュアルに沿って、チェックポイントや各種書類の取り扱い方などを説明します。所得税に関しては度々法改正があるので、毎年、マニュアルも改訂していますね。一昨年には、「扶養控除申告書とは?」「そもそも年末調整とは?」といった基礎を学べるYouTube動画を作成しました。これを事前に見てもらうことで、スムーズに研修に入ってもらえます。中には「何回も見てきました」という方もいて、なかなかの効果でした。

ー スタッフの方は、どんな人が多いんですか?

北野:7割ほどが女性で、40~50代の主婦層が大半ですね。毎年来てくださる方もいます。私とは親子ぐらい年齢が離れている方もいるので、「ちゃんとご飯食べてる?寝てる?」なんて優しい言葉をかけてくださることも。皆さんが持ち寄ったお菓子が休憩テーブルに山積みになってたりしていて(笑)

膨大な作業量のため、ちょっとしたミスが命取り

ー なんか想像できます。スタッフの方たちは実際にどんな作業をしているのか、もう少し詳しく教えてください。

ファイルを入れる収納ボックスがずらり。整然と並ぶ様がなんだか美しい

秋山:大まかに言うと、(1)請け負ったお客さま企業の従業員から送られてくる控除証明書類を回収、(2)申告内容をチェック、(3)間違いがあれば修正して、正しい控除額をシステムに入力——という流れです。(1)の控除証明書類は、仙台の作業場に直接届くようにしていて、届いたら封筒を開封して1人分ずつクリアファイルに入れて保管します。それに不備がないかどうか2回チェック。「本来必要な書類が同封されていない」などの不備がある場合は、その企業または従業員の方に連絡して、しかるべき対応をとってもらいます。

ー ほー、それだけでも結構な手間がかかりますね。

秋山:体感では、だいたい1割ぐらいは控除証明書類を回収する段階で記載間違いや添付漏れなどの不備がありますね。私が毎年担当している会社は全部で12万人規模なので、1万件ちょっとが「不備あり」という感覚です。過去には、全く違う人物の証明書類が同封されていたので、問い合わせたところ「すみません、彼女の証明書を一式送っちゃいました……」という方もいましたね。

ー い、1万件⁇ なかなかですね……。

秋山:(2)の従業員の申告については、今は紙が3、ウェブが7ぐらいの割合ですが、いずれにしてもかなりの件数で書類の不備があります。皆さん年に1度のことですからね。その不備を証明書類と突き合わせながら、一つずつ修正していきます。

北野:最近は、外国人の従業員の方の証明書も増えています。日本語訳を付けてもらうことが前提なのですが、付いていないことも多く、どこの国の言語で書かれた書類なのか分からないのもありますね。

ー 膨大な書類を手際良く処理していかなくてはならないわけですから、ちょっとしたミスが命取りになりそう……。こんな大変な仕事をこなすために必要なスキルって何かありますか。

北野:やっぱり、判断力でしょうか。本当にやることがいっぱいあるので、「これは私じゃなくてもいいな」と思ったらサブリーダーさんにお願いしたり、「今やっておかないと、後で絶対に詰む」というものだったら、先んじてやったりとか、タスクの重要性を瞬時に判断する力が必要だと思います。

秋山:あとは、スタッフの皆さんとの協力体制をいかに作れるか、ですね。気持ち良く働いてもらえるよう、その日の終わりには、なるべく一人ひとりとコミュニケーションをとって感謝を伝えるようにしています。スタッフの皆さんのお力があって、成り立っている仕事です。

あらゆる年末調整システムに対応できる“柔軟性”

ー 聞けば聞くほど大変なお仕事ですが、やりがいを教えてください。

北野:絶対にミスが許されなくて、プレッシャーも大きい仕事なんですけど、納品したときに「ありがとうございます」とお礼の言葉をいただいたり、「来年もお願いします」と評価していただけたりすると、すごくやって良かったなって思いますね。

秋山:私はルーティンワークに見えて、実はいろいろと工夫のしどころがあることですかね。2年ほど前に、「まよわず書けるくん」というチャットボットを作りました。あらゆる形式の申請書類の書き方を教えてくれるというもので、約3,000パターンの回答を用意。このチャットボットの二次元コードを当社が配布する申請用紙に表示したことで、記入ミスが減りました。アンケート調査による満足度は、96%です。

ー ネーミングセンスもさることながら、すごい成果ですね。お二人や年末調整業務に関わる皆さんへの信頼が、選ばれる理由なんだろうなと思いました。加えて、キュービーファイブならではのお客さまから評価されている点はありますか?

秋山:一番は“柔軟性”でしょうか。今はさまざまな年末調整システムが世に出ていますが、当社はいずれのシステムにも対応しており、お客さまの利用しているサービスに合わせて業務を代行できます。そればかりでなく、ときには「この給与計算ソフトを使っているなら、この年末調整システムに切り替えると作業効率が上がりますよ」といったご提案をすることもあります。

ー システム運用のアドバイスもしてくれるわけですね。というか、給与計算と年末調整のシステムって別物なんですね。

秋山:使い分けている会社が一般的です。ですから、最終的に「年末調整システムに入力した結果を給与計算システムに反映させる」という業務が発生します。実は、これがすごく面倒。そのため、この業務だけをBPOしたいというお客さまもいらっしゃいますね。あとは、進行スケジュールや審査基準、提出書類に不備があった従業員の方への連絡方法……など、お客さまの要望にきめ細かにお応えできることも当社の強みですね。こうした“勝手の良さ”が評価されて、年々、受注件数が増加しているのだと思います。

ー 最後にお二人の今後の目標について教えてください。

北野:ここ数年、ご依頼数が急増していて、今年は80万人分を目標にしています。その分、効率化がさらに求められるので、昨年の反省点も生かしながら、業務体制の強化を図っていきたいと思います。あとは、申請書の紙からウェブへの切り替えがうまくできていないお客さまも多いので、そのサポートもしていきたいですね。

秋山:冒頭でもお話しした通り、お客さまが社内だけでやろうとすると、本当に一大プロジェクトで大変。それを外注していただくことで、私たちが大きな負荷軽減に貢献できます。でも、ミスの許されない仕事だからこそ、こちらがきちんとできないとお客さまも困ってしまいます。そんな中でも「来年も頼みたい」「他の企業に一度お願いしたけど、またキュービーファイブさんにお願いしたい」といった声をいただけると、信頼されていると感じてすごくうれしくなります。
2022年からキヤノンMJグループの一員になったので、キヤノンの強みである画像認識技術やさまざまなITソリューションを年末調整業務に活用することも考えていきたいですね。もし年末調整でお困りでしたら、ぜひキュービーファイブにお声掛けください。お客さまのために、最後までやり抜きます!

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