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「やると決めたら、やる」
ソリューションスペシャリストが“壁”を乗り越え続ける理由

2024年4月22日

情熱の源泉

お客さまの課題解決に向け、ITソリューションを軸とした企画立案を担う、キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)の「ソリューションスペシャリスト(以下、SS)」。業界動向やITなどの幅広い知識と、複雑な課題を抱えるお客さまに寄り添った提案力が求められる重要なポジションだ。

入社12年を迎え、MA事業部の金融SS統括部で活躍する永坂 文乃は、その確かな仕事でクライアントや同僚から大きな信頼を得ている。しかし文系出身の永坂は、「入社前、ITに関してはほぼ素人だった」という。「常に乗り越えないといけない壁を与えられている気がする」と語る永坂は、現在に至るまでどのような道のりを歩んできたのか。多くの壁を乗り越えて道を切り拓いてきた永坂の“情熱の源泉”を探る。

『お客さまとともにソリューションをつくっていく』ソリューションスペシャリスト

キヤノンマーケティングジャパン MA事業部 デジタルビジネス推進本部 金融SS統括部 ソリューションスペシャリスト 永坂 文乃

永坂が所属するMA事業部 デジタルビジネス推進本部は、大手企業や官公庁などが抱える課題に対してITソリューションを軸とした企画立案を行い、解決へ導く部署だ。永坂は、その中の金融SS統括部においてチーフを務める。

「SSは『お客さまとともにソリューションをつくっていく』仕事だと考えています。単に既存の製品を売るのではなく、例えば『お客さまが中期経営計画で掲げる方向に進むために、私たちはどのようなお手伝いができるか』という上流部分から考え、ともに課題解決の方法を探ります」

金融SS統括部は、銀行や保険会社、証券会社など、幅広い金融企業を顧客としており、永坂はメガバンクを中心に、信託銀行や地方銀行なども担当している。近年、金融業界では業務効率化や収益性向上、人手不足解消などに向け、デジタル技術を導入した対策が急がれている。永坂のもとへ舞い込む相談も、そうした内容が年々増えているという。

「中でも銀行の店舗改革は、重要なテーマの一つです。例えば店舗の窓口業務を自動化し、来店するお客さまご自身で窓口手続きを完了できるよう改革を進めるケースも増えています。多様なニーズに対し、私たちがお手伝いできることは何かを常に考えています」

キヤノンMJは業界を横断して幅広い顧客の課題を汲み取っているため、各企業の共通の課題と個々の課題を見分け、整理ができる。多くの企業が抱える課題なら、それを解決する共通基盤を開発することで、広くソリューションを展開することも可能だ。運用も含め、本当にベストな形でソリューションを提供できているのか、俯瞰の視点も持ちながら顧客と二人三脚で歩んでいく。

そんな仕事柄、SSに必要な力は、「会話のキャッチボール能力」と永坂は断言する。

「そもそものお困りごとを聞き出せないと、何もご提案できません。求められるのは、質問力、傾聴力、洞察力……会話を通じてお客さま自身が気付いていない課題に気付き、解決までのベストな道筋を探る力ですね。

あと、思いやりやチーム力も大切です。自分一人でできる仕事はほとんどありません。お客さまとのやりとりのフロントに立つ営業や、パートナーである社外ベンダーと連携して、いかに全体でアウトプットを最大化できるかを、いつも意識しています。私の仕事が立て込んでいたらチームの誰かにサポートをお願いする。反対に忙しいチームメンバーがいたら助ける。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、そんな思いやり、助け合いの精神こそが、この仕事の基本であり常に意識すべきことだと考えています」

試行錯誤から“人を巻き込むことの大切さ”を知る

そんな風に人やチームと関わり、“巻き込む”姿勢を体得したのは、積み重ねてきた試行錯誤の経験によるところが大きいかもしれない。

永坂は、入社前までITについて専門的に学んできたわけではない。大学では社会情報学科に進学。そこで興味の赴くまま、都市計画や認知科学など幅広い教科を学んできた。「世界を広げる」ことに貪欲で、一学年上の先輩が立ち上げたWeb制作会社で代表取締役を務めるなど、学生時代から会社経営も経験した。

「とはいっても、名ばかりの代表で、ほとんど事務作業をしていました。ただ、このときに『1日中机に向かうのは、自分には向いていない!』と気付いて、たくさんの人と関わる仕事がしたいと考えたんです。そうだ、メーカーの営業職なら、お客さまとの会話がものづくりに生かされて、多くの人に喜ばれるに違いない——そんな想いから就職活動をして、キヤノンMJに入社しました」

入社1年目は、飛び込み営業を経験。今思い返しても「あんなに人に会う経験はもうないだろう」と思えるほど、ひたすらお客さまと会い続ける仕事だった。

「地方から出てきた新人の私が、いきなり都心のビルに入っているたくさんの企業を回り、困りごとなどを伺う。それはもう、ハードな仕事でした。ただ、先輩に営業の考え方を教えてもらったり、お客さまに優しく接してもらったりという、多くの貴重な経験を得ることができました。大変でしたが、そのとき人に支えられた経験が、『積極的に外に出て、多くの人と関わっていきたい』という今のスタンスを固めてくれたように思います」

しかし、その後しばらくは現場に出ない仕事が続いた。入社2年目に任されたのは、社内システムの立ち上げ。システムエンジニアと会話ができるレベルのIT理解が必要で、自らプログラムを書くことも求められた。入社前、ITに関してはほぼ素人だったが、Javaなどの専門知識をひたすら勉強して乗り切った。

現在の金融SS統括部に配属されたのは入社4年目のことだ。やっと現場に出られる念願の配属だったが、それまでに学んだIT知識に加え、幅広い製品・サービスなどの知識、マーケティングの知識などが必要だった。

「ご提案する製品・サービスを勉強したり、自分で検証したりするなど、何が求められているのか試行錯誤しながら取り組みました。例えばお客さまへOCRソリューションを提案した際、スキャンがうまくいかないときは、誰に聞いていいか分からず、自らスキャナを借りてどこに原因があるのか検証を重ねました。心が折れそうになったこともあったのですが、『やるからには、自分にできることを最後までやり遂げたい』と思っていました。SSと名乗る以上、『自分は何ができる人間なのか、武器は何なのか』を確立しなければいけないと思い、必死だったんです」

しかし、徐々に大型案件を任されるようになった頃、大きな挫折を味わうことになる。

「金融機関向けの情報サイトを立ち上げるという超大型案件を失注してしまったんです。要件定義だけでも3~4カ月を費やして、指名はほぼ間違いないと思っていたのですが、最後の最後で先方と条件が折り合わず……。上司から失注が確定したことを聞かされたときは放心状態で、その日はまったく仕事が手につきませんでした」

「今でも思い出すのがつらい」と回想する永坂。ただ、自分が頑張っていたことを社内の皆が認めてくれたことが大きな救いとなった。自分の現在地を受け止め、次にどうするべきかを冷静に考えられるようになったという。

「当時は、自分だけでどうにかしようという気持ちが強すぎたのかもしれません。上司や同僚への頼り方が分からなかった。もし、自分から助けを求めて周囲をうまく巻き込めていたら、もう少し違った、お客さまにとってのベストな提案ができたかもしれないと今では思います」

「やるったら、やる‼︎」。一度決めたら最後までやり抜きたい

大きな声でハキハキ受け答えする永坂は、表情が豊かでよく笑う。その場にいるだけで空気をパッと明るくするキャラクターは、「挫折」という言葉とは無縁のようにも見える。
本人は、「常に乗り越えないといけない壁を与えられている気がする」と話すが、それを明るく乗り越えられた理由は何だったのだろうか。

「何でしょう……『やるったら、やる‼︎』と腹を括っているからですかね。本筋ではない理由で諦めることが嫌で、一度決めたら最後までやり抜きたいという気持ちが強いかもしれません」

「日々仕事をしていく上で大事にしている考え方を『一言』で教えてください」との問いに、悩み抜いてこの言葉を選んだ永坂。
「やっぱり『やるったら、やる!!』ですかね! あとは、仕事をする上で『相手の心に寄り添うこと』も大切にしています」

学生時代はバスケットボール部に所属していたが、部活の人間関係が辛かった時期もあった。ただ、人間関係が理由で好きなバスケをやめるのは違うと感じ、やり抜いた。そんな姿勢が仕事にも表れている。

マーケティング、プログラミング、ファイナンス……永坂は自分の力不足の壁を感じると、その分野の勉強に打ち込んで知識を増やし続け、やり抜いてきた。資格の習得にも熱心だ。

「自分では“努力している”という実感はあまりなく、ただ与えられたミッションに全力でぶつかっているだけです。目の前の壁に対して、最初は登り切るスキルも知識もないんですが、どうにか越えようとあがいていると、まわりの人がロープやらはしごやらを用意してくれる。それで何とか登り切ることができているのかもしれません。で、その壁を越えたら、また目の前にさらに高い壁が用意されているんですよ(笑)」

何かを頼まれると、「誰もやらないなら、自分がやらなきゃ」と腹を括ってしまう自分がいる。「なんだかんだ、新しいことにチャレンジするのが好きなんです」と笑う永坂が次の壁を乗り越えたとき、どのようなさらなる成長を見せてくれるのか、期待せずにはいられない。


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