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イマドキの若者が共有する背景とは?report12

近年急速に需要の高まりを感じるシェアリングサービスや様々な機能を備えたSNSの登場により、
個人間でも気軽に共有できる時代が到来しています。
そのような環境で育つデジタル・ソーシャルネイティブ世代の若者に対して、
“共有への抵抗感が少なく、シェアリング体験に前向き”というイメージを
お持ちの方もいるのではないでしょうか?
今回はイマドキの若者に共有が浸透する背景を紐解くことで、未来につながる“ヒント”を探ります。

目次

Insight 01:共有しないと仲良くなれない?! #SNSは名刺 #共有が共感に #効率的な理解
Insight 02:欲しいのは、人との“つながり” #温度感 #心地よい選択 #あえての余白
Insight 03:一体感を、味わいたい。 #共体験 #モチベーション #セルフコントロール
Column:抵抗感より効率優先?!察しの文化は若者にも #ハイコンテクスト文化 #相手への配慮 #自分軸

前提の整理:共有の対象とは?

そもそもイマドキの若者がどんなことを共有しているかご存じでしょうか?大学生9名とのワークショップで出た意見を中心に、リアル・オンライン問わずご紹介します。

  • 時間・空間の共有

    離れた場所にいても一緒に勉強できるオンライン自習室、切磋琢磨できる学習時間数の可視化、勉強や運動をしながらの通話、ライブ(配信含む)参加、メタバースSNSによるご近所ライフ、民泊サービスなど

  • 体験したことの共有

    思い出や周囲と異なる新しい経験など

  • 価値観・気持ちの共有

    話題の16タイプ別性格診断、推し活など(例えば推し活の一つ「ソンムル交換※1」も一見すると物の交換に思える行動ですが、背景には“好き“という気持ちの共有があると捉えられます)

  • 状況の共有

    通知後2分以内に写真を投稿する話題のアプリ、連絡の手間を省く位置情報など

  • ノウハウの共有

    “好き”を活かした知識やスキルなど

  • 物の共有

    レンタルサービス、フリマアプリなど

  • ※1
    韓国発の推し活文化「ソンムル交換」とは

    一般的には推し活の一環でファン同士や友達同士でプレゼントを贈り合うことを指しています。 誕生日やライブ、ファンミーティング※2の日などに手作りグッズやお菓子などを交換します。

  • ※2
    ファンミーティングとは

    ファンとの交流を目的としたイベントのこと。

仮説:若者にとって共有とは、コミュニケーションそのもの?

report11にもあるように、イマドキの若者は「人とのつながり」を求めていることが感じられます。多様な内容を気軽に共有できる現代の若者にとって、誰かと共有することで新しい出会いや視野の拡大となっているのではないでしょうか。今回若者と議論するにあたり以下の仮説を立てました。

若者にとって共有とはコミュニケーションそのものである。
人との出会いや視野の広がりに繋がるため、
誰かに共有したい、共有されたいと思える体験に価値を感じている。

今回のワークショップには、大学生9名に参加してもらいました。参加者には普段の生活を振り返りながら自身の意識や経験について紹介してもらい、その過程で気づいた若者の価値観についてディスカッションしました。仮説の内容はもちろん学生には知らせていませんが、実際はどうだったのでしょうか。具体的なエピソードを紹介しながら検証します!

Insight1

仲良くなるために、欠かせないこと。人間関係も効率的?!

#SNSは名刺
#共有が共感に
#効率的な理解
  • 極端に言えば、共有しないと仲良くなれない。共有することでお互いを理解して、仲が深まっている。
  • これから仲良くなれそうな人にはガンガン共有する!オンライン上で共有し合った内容はリアルで話すネタにもなる。
  • SNSのアーカイブは、記録用途だけでなくプロフィールとしても活用。新しく知り合った人はInstagramのストーリーを見て人となりを知る。自分も知ってもらいたいから趣味や好きなことを中心に投稿する。

中にはこんな意見も!

仲を深めるために重要な役割を担うSNSですが、自分の投稿を定期的に見返す人や投稿直後にアーカイブへ移動させるという人もいました。元来SNSは他者に対して発信する場でしたが、自分だけのオリジナルアルバムやログとして活用する若者もいるようです。またイマドキの“エモい”という感性においても、友人と分かち合うためには共有するタイミングも重要かと思いきや、「エモさを感じるものはいつ見てもエモい。だから共有のタイミングはこだわらない。」という興味深い意見もありました。

Insight2

欲しいのは、人との"つながり"

#温度感
#心地よい選択
#あえての余白
  • 「常に繋がっていたい人」もいれば「ひとり時間を大切にする人」もいるので程度の差はあるが、基本的に人とのつながりを求めていると思う。
  • 自分の投稿に反応があればもちろん嬉しいし、いいねをくれた人にいいねを返すこともある。でもSNSの投稿は誰かにリアクションをもらうことが全てではなくて、投稿して満足!ということもある。私の場合はいつでも何にでも反応が欲しいわけではない。
  • 返事がほしいときはLINEが多いけど、恥ずかしかった出来事や面白かったことはすぐに誰かが見てくれるストーリーにあげることも。“温度感”のある話題は、ホットなうちに分かち合えるツールを使う。
  • 欲しいのはつながりであって、一度にたくさん共有したいわけではない。過剰な機能追加はできることが多すぎて逆に疲れるから、少し余白がほしい

中にはこんな意見も!

知り合った人とSNSのアカウントを交換することも多い若者にとって、フォロワー数はもちろん、SNS内で設定できる「親しい人リスト」はどんどん増える一方では?と思いきや、卒入学などライフステージの変化に合わせて定期的に整理をしているようです。今回の参加者からは「つながりが薄くなったら親しい人リストから外すこともあるし、外されていることもある。外すときはお互い同じ気持ちだと思うから、外すのも外されるのもそこまで気にしてはいない。」という意見がありました。オトナ世代の感覚よりも、もっとシンプルで素直に人間関係を捉えているのかもしれません。

Insight3

一体感を、味わいたい。

#共体験
#モチベーション
#セルフコントロール
  • 勉強時間の共有は、競争だけでなく一緒にやっている感がいい。ながら通話の感覚。もし周りの勉強時間を見てマイナスな気持ちになるときはアプリを開かないなど、自分でコントロールしながら使っている。
  • コロナ禍で下がった士気をあげるために部活仲間と走りながら通話した。スクショや通話記録も残していて、皆で乗り越えたいい思い出に。
  • ライブに行くのは推しに会いたいだけでなく、その場にいる人たちと空間を共有したいから。
  • SNSの生配信機能はコンテンツの内容だけでなく、同じ瞬間に同じ映像を見て皆で一緒に喜んだり驚いたりできることが楽しい!
Column

抵抗感より、効率優先?!察しの文化は若者にも。

#ハイコンテクスト文化
#相手への配慮
#自分軸

イマドキの若者が連絡の手間削減のために位置情報を活用したり、2分以内に写真を投稿し合って今どこで何をしているのかが分かるコミュニケーションをすることに対して、驚きや抵抗感をもつオトナ世代も多いのではないでしょうか?若者にとって位置情報などでリアルタイムを共有することは、相手の状況が分かり、今連絡しても迷惑ではないかという“配慮”にもなっているようです。日本特有のハイコンテクスト文化、いわゆる「察しの文化」が現代の若者にも根付いていることが感じられるのではないでしょうか?リテラシーが高いからこそ、相手を気遣う為に便利なツールとして上手に活用しているのかもしれません。もちろん若者の中にも位置情報を共有しない人や、プライバシーの観点から時差を設けてSNSを投稿するなど工夫している人がいます。今回の参加者からも「周囲はプライベートな内容の共有を当たり前に捉えているけど、自分は抵抗がある。不便を感じなければ周りに合わせてまでやらないし、友達がやっているから自分もやりたい理由にはならない。」という意見がありました。共有し合う周囲に対して否定もしないけど、自分の気持ちも大切にする多様性が浸透した現代の若者らしさが垣間見えるのではないでしょうか。

まとめ

共有の内容や程度は人それぞれですが、現代の若者にとって共有とはコミュニケーションそのものであることが分かりました。だからこそ仲良くなるためには欠かせないことであり、人とのつながりや視野を広げるきっかけにもなっています。コロナ禍を学生のときに経験し、青春時代に仲間と苦楽を共にできない困難に直面した世代だからこそ、一体感を求めるのかもしれません。また多様性が浸透したことにより自分らしさが必要になる機会も多い若者にとって、好きなことや経験を共有することは周囲に角を立てずに間接的にアイデンティティを表明できる手段の一つになっていると感じました。 またプライバシーを配慮して時差投稿したり、オンライン上の共有は相手もポジティブになれる内容を心掛け、それ以外はリアルで共有するなど様々な工夫をしていて、共有に対するリテラシーの高さも印象的でした。日本らしいハイコンテクスト文化の背景に、合理的でリテラシーの高さを持ち合わせる若者だからこそ抵抗感よりも効率を優先し、前向きにシェアリング体験を楽しむことができているのではないでしょうか。

workshop.12 概要

開催日
2024年6月5日
テーマ
イマドキの若者が共有する背景とは
課題
  • 普段の生活を振り返り、誰かと共有した/誰かに共有されたことで印象に残っているエピソードを3つ教えてください。
  • 1で記入した内容を踏まえ、あなた自身がどんなことを共有したい・されたいと潜在的に思っていたか、分析してみてください。
  • 「共有」というキーワードで、あなたが興味深いと思う若者のトレンドやニュースを教えてください。
  • 1~3の内容を踏まえて、現代の若者に「共有」が浸透している背景や理由を記入してください。
形式
個別発表とグループディスカッション
開催場所
オンライン
参加者
大学生10名・ichikara Labメンバー7名

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