私たちの旅行・出張はキヤノンITSが支えていた?
ホテルシステム「PREVAIL」が提供する体験価値とは
2025年2月25日
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旅行や出張などで多くの人たちが利用する宿泊施設。私たちのレジャーや仕事を支えてくれる大切な存在ですが、近年、ホテル業界は人手不足をはじめとするさまざまな課題に直面しています。
キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)は販売支援型ホテルシステム「PREVAIL(プリベイル)」を長年提供しています。このシステムは、予約管理から客室稼働率をもとにした宿泊料金の設定、セルフチェックインまで幅広い機能を有しており、長年培った業界の知見と技術力を生かしたソリューションでDXを推進し、業界が抱える課題解決に貢献しています。
業務の効率化だけでなく、宿泊者や社会に対するインパクトまで、PREVAILを通してキヤノンITSが目指すホテルDXの可能性について、キヤノンITS 流通ソリューション事業部の鈴木 和人さんと辻 夏子さんに話を聞きました。
ホテル業界が直面する人手不足とオーバーツーリズム
― コロナ禍から円安まで、ホテル業はここ数年で社会の変化をもっとも大きく受けた業界の一つかと思われますが、直近はどのような状況なのでしょうか?
辻:コロナ禍で休業や倒産が続いた時期もありましたが、2022年の水際対策緩和、2023年の5類感染症への移行を契機として、ホテル業に限らず観光業全体の需要が急速に高まってきています。さらに円安の影響でインバウンドの旅行客が急増し、2024年の訪日外客数は累計で過去最多を記録しました。コロナ禍からの回復、円安という二つの要因によって、旅館・ホテル市場はコロナ前の2019年と比べても同水準か、それを超えるぐらいの勢いで復調しています。
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― 良かったです! 観光業界の活況は多くの方が感じているところかと思いますが、ホテルや旅館にとってはうれしい変化ですね。
辻:そうですね。ただ一方で、急激な変化に伴ってさまざまな課題も生じています。特に大きなものが人手不足とオーバーツーリズムの二つです。
人手不足に関してはコロナ以前から課題として挙げられていましたが、コロナ禍で離職が進み、需要の回復後も人が戻らず、より深刻な状況に陥っています。外国人の方をスタッフとして雇ったり、いわゆるスキマバイトを活用したりして対処しているホテルは多いのですが、教育の時間が取れずなかなか人材が育たないという問題も発生しています。
― なるほど。外部と内部の状況のギャップがより大きくなってしまっているということですね。もう一つのオーバーツーリズムの課題はどのようなものなのでしょうか。
辻:オーバーツーリズムは、主要な観光地に旅行客が溢れかえることで、地域住民の方々の生活環境や、旅行客の観光体験に悪影響を及ぼすことを指します。例えば、観光客が大きなスーツケースを持ってバスに乗車することで地元の方がバスに乗れなくなってしまう、車道にはみ出して写真を撮影することで車の通行の妨げになってしまう、といった話題をニュースなどで目にすることがあると思います。対策として観光地に入れる人数や時間を制限したり、観光地に入るための課税をしたりといった取り組みも進められているのですが、根本的な解決には至っていないのが現状です。
オーバーツーリズムはホテル運営への影響も大きく、私はつい最近までホテル事業を展開する企業に勤めていたのですが、インバウンド需要が急増したことでフロントに長蛇の列ができてしまっている状況を多く目にしました。ここの対応にあたるスタッフだけを大幅に増やすことはできず、またどうしても外国人の方の接客は時間が長めにかかってしまうということもあり、お客さまをお待たせしてしまうのが心苦しいという悩みをフロントの担当者から聞いていました。
― 先ほどの人手不足の影響が大きそうですね……。
鈴木:そうなんです。そのような課題を解決する手段として注目されているのが、デジタル技術やデータを活用した「ホテルDX」です。私たちキヤノンITSが長年提供している「PREVAIL」も、まさにホテルのDX推進を支援するソリューションになります。
30年の知見から柔軟かつ確実に課題を解決し、顧客体験の向上につなげるPREVAIL
― PREVAILがどのようなソリューションなのか、簡単に教えてください。
鈴木:PREVAILは、「PMS(Property Management System)」と呼ばれるホテルシステムを中心にさまざまな機能を備えたソリューションです。予約・客室の管理やフロント・会計管理、売上・売掛・顧客などのデータ管理など、ホテル経営に必要なあらゆる業務をシームレスに管理することで業務効率化や収益向上を実現します。
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例えば、ホテルには日々の需要に応じて客室の販売価格や販売方針を決めるレベニューマネジメントという業務があるのですが、これがなかなか職人の領域と言いますか、レベニューマネージャーと言われる熟練者の勘と経験に委ねられているケースも少なくありません。そこでPREVAILではレベニューマネジメント機能を提供し、あらかじめ販売方針をシステマチックに設定することで、経験が少ないスタッフでも最適な意思決定ができるように支援しています。
ほかにも、多岐にわたるホテル業務の中でも負荷が高いとされているチェックイン業務を効率化すべく、フロント等に設置されたタブレット端末を使用して宿泊者ご自身にチェックインを行っていただく「タブレットセルフチェックイン」機能などを提供しています。画面上で言語の設定などもできるため、先ほど辻が申し上げたインバウンド需要の急増の面にも対応するソリューションとなります。
― なるほど。チェックインの手間を省けるようになると、従業員の業務効率化だけでなく、宿泊客の体験価値向上にも貢献できそうですね。
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鈴木:まさしくそのとおりです。具体的な事例として、ワシントンホテル様との取り組みを紹介させてください。
ワシントンホテル様は「ワシントンホテルプラザ」「R&Bホテル」という二つのブランドを展開されているのですが、前者は当社のPMSを、後者は他社のPMSを導入していました。しかし、今後の事業構想やブランド間の人員流動化、ランニングコストなどを考慮するとPMSを統一したほうが効率化を図れるということで、PMSだけでなく宴会システム、バックヤードの購買システム、財務会計システムなどをトータルで連携できるPREVAILを選定いただきました。
導入と併せて業務の見直しも進めていただき、チェックインのプロセスにタブレットやパスポートリーダーなどを取り入れることで、チェックイン業務にかかる時間を大幅に短縮できました。顧客満足度の向上にもつながっているという声もいただいています。
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― 世の中にはさまざまなPMSが存在すると思いますが、その中でPREVAILの強みはどんなところにありますか?
鈴木:実はPREVAILの前身に「フロントくん」シリーズというPMSがありまして、これは30年以上前に誕生した知る人ぞ知るヒット商品なんです。長い歴史を通して培ってきた業界知識とノウハウにより、現場のさまざまな運用やお客さまのニーズに合わせた機能を用意している点は大きな強みの一つだと思っています。
さらに、導入企業様の声やフィードバックを定期的に収集する仕組みを設けることで、継続的な機能改善や拡充にも取り組んでいる点や、導入後のアフターサポートが充実している点もご好評いただけているのかなと思います。
DXで生まれた時間と心の余裕を“おもてなし”に。そしてより多くの選択肢を観光客に
― PREVAILがチャレンジしているホテルDXが進むと、社会にはどのようなメリットやインパクトが生まれるのでしょうか?
鈴木:ホテル業界の方々と会話をする中で、とても印象に残ったことがあります。それは、ホテルで働いている方々は、人を“おもてなし”することに魅力、やりがいを感じてこの仕事に就いていつつも、現状は業務の多忙さやシステムの煩雑さによって手元の作業に集中せざるを得ず、余裕をもってお客さまと接することができない状態であるということ。ホテル業界から人材が離れてしまう、そして戻ってこないという話もありましたが、そういった状況が要因の一つになっているのではないでしょうか。
ホテルDXを推進することでスタッフの方々に余裕が生まれれば、より気持ちを込めたおもてなしができるようになる。そしてそのスタッフのちょっとした気遣いによって、お客さまがまた利用したいと思ってくれるかもしれない。その動きがつながっていくことで、業界に良い空気感が生まれていき、また働きたいと思っていただける方も増えるかもしれない。お客さまもスタッフも増えていくようになっていく、そんな良い循環をつくっていけるとうれしいですね。
辻:そうですね。私の経験からも、ホテルのスタッフには接客が好きな方が本当に多かったなと思います。フロントに限らずバックヤードの業務も含めて作業をできる限り効率化できると、お客さまと接する時間をより長くすることにつながるので、モチベーション高く働けるようになっていくのではないかと思います。
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鈴木:それから、オーバーツーリズムについては、旅行客をいかに分散させられるかが重要で、そのためのデータ・テクノロジー活用は観光庁や地方自治体も注力しているポイントの一つです。例えばIT企業と連携して各地域のホテルの顧客データを分析することで共通する傾向を見つけ出し、その結果をもとにプロモーションをかけるという取り組みが出てきています。現状過密になっている地域でのニーズを、別の地域でも満たすことができるということを知っていただき、より多くの選択肢が生まれることで、分散のためのベースができていくと考えています。
このようにホテル事業者だけでなく、われわれのようなSI事業者、周辺地域も含めてみんなが連携して取り組むことで、社会的な意義も生まれてくるのではないかと思います。
ホテルとの共創で実現する、新たな顧客体験と社会貢献
― それでは最後に、今後の目標やチャレンジしたいことを教えてください。
辻:PREVAILはホテル経営のあらゆる場面に貢献できる可能性を持っているソリューションです。今は予約管理を中心にサービスを展開していますが、今後さらにお客さまの声を取り入れながらさまざまなサービスを開発し、お客さまをトータルで支援するソリューションに育てていきたいと考えています。
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鈴木:昨今のインバウンド需要の高まりも相まって、ホテルは立地が良ければ営業やマーケティングに注力しなくてもある程度の集客が見込める側面があります。しかし、これから先もずっと特需が続くとは限りません。そのためにデータを活用し、ファン層の特性を考慮したコミュニケーションや、セグメントを分けたOne to Oneマーケティングなどをできる状態にしておくことが重要です。ただし、現状ですとデータはあるけれど十分に活用できていない、あるいはシステムごとにデータが点在し統合できていないケースも多いので、そこを支援するサービス開発も検討しています。
そして何よりも、単にサービスを開発して提供するだけでなく、お客さまと共創しながら新たな価値を生み出すことで、それが地域への貢献につながり、やがて社会への貢献につながる。そのような大きな価値創造にチャレンジしていきたいですね。
関連リンク
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※1
「PREVAIL(プリベイル)」についての詳細へ
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※2
ワシントンホテル様の導入事例についての詳細へ
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