受験を通じた「人間的成長を促す本質的な教育」に向けて。早稲田アカデミーとキヤノンMJが挑む「教育現場のアップデート」を追う
2024年7月22日
社会が急速に変化する今、「教育」に求められることも変わりつつある。かつて、子どもの進学先は「偏差値」や「進学率」などで選ばれることも多かった。しかし今は学力だけにとどまらず、「わが子の好奇心を育んでくれるか」「将来の夢を見つけられる環境か」など、人間的成長を促す、より本質的な教育が求められつつあるという。それは学校に限らず、「進学塾」に対しても同様だ。
そうした社会ニーズの変化を背景に、自校の教育現場のアップデートに挑戦し続ける塾がある。首都圏を中心に学習塾を展開する「早稲田アカデミー」だ。同塾はどのような志を持って「教育現場のアップデート」を進めているのか。
取り組みをけん引する株式会社 早稲田アカデミー 取締役 執行役員 運営本部長の千葉 崇博さんと運営部次長 兼 開発課長の秦野 尚子さん、そして、その実現に向け共に挑み続けるキヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ) GBソリューション第一営業本部の竹内 力に話を聞き、両者の“ 挑戦”を追った。
生徒の内面性を育む本質的な教育“ワセ価値”を提供する
「早稲アカ(ワセアカ)」の愛称で知られる「早稲田アカデミー」は、首都圏を中心に180校以上を展開し、中学・高校、大学の各受験において例年、高い合格実績を挙げている。同塾の千葉 崇博さんは、「近年、塾に対する保護者の期待が変化している」と話す。
「早稲田アカデミーは進学塾ですから、成績向上や志望校合格へのご期待は変わらず高いものの、加えて、もっと本質的な価値の提供が、より求められるようになったと感じています。それは、受験の先にある『将来の幸せ』をつかむための、内面的な力を育むこと。例えば『何かに本気で取り組み、やり抜く姿勢』や、『問題を発見し解決する力』などです。そうしたニーズは以前から少なからずありましたが、変化の激しい時代となり、「自ら学び続け、進みたい道に進むことができる力を子どもに身につけさせたい」と考える保護者の方が、一層増えていると感じます」(千葉さん)
そのためには、教育現場をアップデートし続け、授業やサービスの質をさらに高めていく必要があると千葉さんは語る。
同塾では、そういった本質的な価値を『ワセ価値』、成績向上や志望校合格など、将来の選択肢を広げるために変わらず求められる価値を『本来価値』と名づけ、その二つを両輪として生徒に提供していくことを掲げている。
「これにより、『自ら人生を切り拓き、より良い社会をつくることができる人材』を輩出し続けたい。それが私たちの社会への貢献だと考えています」(千葉さん)
「各講師の授業の品質向上、生徒一人ひとりに合わせた個別最適な指導など、教育内容をより高めていくことはもちろん、安心・安全に学べること、オンライン授業など、生徒の学ぶ意欲を後押しする環境の向上も必要です」(千葉さん)
こうした早稲田アカデミーの姿勢に共感し、教育現場のアップデートに共に挑んでいるのが、キヤノンMJだ。早稲田アカデミーの営業を担当するキヤノンMJの竹内 力は、次のように語る。
「2010年にオフィス向け複合機を全校舎に導入いただいて以降、弊社は長年にわたり業務効率化など、さまざまなソリューションを早稲田アカデミーさんへ提供してまいりました。先ほど千葉さんのお話にもあったように、昨今、教育に対するニーズが大きく変化し複雑化する中で、私たちがお手伝いできることも、より一層増えていると感じています。
偶然なのですが、私自身も早稲田アカデミーさんの卒塾生。現在、わが子も通っているのですが、受験を目的とした学力向上にとどまらず、本質的な学びを提供するという早稲田アカデミーさんの教育方針は、子どもが勉強に向き合う姿を通して保護者としても感じています。子どもたちの学びの環境をアップデートするお手伝いができることをうれしく思います」
ネットワークカメラを全教室に導入。「授業の品質向上」にも生かす
2023年、そんな竹内が主として担当したのが、早稲田アカデミーの全教室にネットワークカメラを短期間で導入するというプロジェクトだった。同塾はすでに各校舎にネットワークカメラを設置していたが、さらなる追加導入をキヤノンMJに相談したのだ。その台数はおよそ2000台に及ぶ。
同塾の秦野 尚子さんは、今回の導入理由を次のように話す。
「すでに導入していたネットワークカメラは、主にセキュリティを目的としたものでしたが、近年高まる安心・安全な学習環境へのニーズに応えるために、より一層の強化を図りたいという想いがありました。また、映像をもっと生かすことで、さらなる授業の品質向上を実現していきたいと考えました」
「授業」は早稲田アカデミーの提供価値の肝である。その質が適切に担保されているかを常に確認し、改善を続けていくことは重要な取り組みの一つだ。従来は、本社の人員や各地域の責任者などが、限られた期間内に校舎を巡回していた。しかし、ネットワークカメラを活用し、映像を一元管理して共有できるようになれば、移動などの時間が軽減できることはもちろん、良い授業の映像を他の講師と共有して、塾全体の授業の品質の底上げに生かすこともできる。
カメラ映像の活用の幅を広げていくという取り組みには、竹内も大きな可能性を感じていた。ただ、180校以上を展開する同塾の全教室に短期間でカメラを設置することは、難易度の高いプロジェクトになることが予想された。そこで、事前に考えられるさまざまな課題を洗い出し、最適な施策を検討していった。
「何の対策もせずに2000台超のカメラを導入すると、早稲田アカデミーさんのネットワーク回線がパンクしてしまうという懸念がありました。ネットワークインフラの刷新という手段も検討しましたが、それでは半年以上の時間を要してしまうため、早急に導入を進めたい早稲田アカデミーさんの意向とは合いません。また、約700台ある既存のカメラを、新規に導入するカメラと併せて管理することを検討していたため、ネットワーク回線に負荷をかけず、既存のカメラと連携できるシステムを実現する必要がありました。さらに、映像活用による授業の品質向上を目指す早稲田アカデミーさんの想いを実現するには、『音声』の記録にも対応できなければなりません」(竹内)
「キヤノンMJとしてできるベストな提案をしたい」その想いで大勢のプロジェクトメンバーたちと共に考え抜き、竹内が導き出した答えが「VisualStage Pro powered by Arcules(以下、VisualStage Pro)」の導入だった。「VisualStage Pro」はクラウドベースの映像プラットフォームだ。
「VisualStage Proなら、各種メーカーのカメラはもちろん、アナログタイプという旧式のカメラにも一部対応することが可能です。映像データはすべてクラウド上に保存でき、さらにアップロードの時間帯を指定できます。早稲田アカデミーさんの場合は通信量が少ない深夜帯に設定することで、ネットワーク回線を増強することなく、新規導入・既存カメラ合わせて約2700台もの運用を実現できます。また、音声記録についても追加開発することで対応可能になります」(竹内)
晴れてこの案が採用され、検証を経て急ピッチで各教室への取り付けが施工されることとなった。
「授業やサービスの質を高めていくことに対する、早稲田アカデミーさんの熱意とスピード感を感じており、少しでも早くそれに応えたいという想いがありました。数千台規模のカメラを短時間で導入することは決して容易ではありませんでしたが、施工に必要なさまざまな部品の各調達先、そしてシステムや施工担当者など、多くの関係者と密に連携しながら、キヤノンMJグループの総力を結集することで実現できました」(竹内)
二人三脚で教育現場の革新に挑み続ける
取材した2024年4月には、VisualStage Proの運用開始から約2カ月がたった。音声記録の追加開発も、開発元であるキヤノングループのArcules社でβ版の検証が始まっている。音声記録の本格稼働が始まれば、映像活用の可能性はさらに大きく広がっていくだろう。
「今後は授業の確認がこれまでよりも簡単に行えるようになるので、講師に向けてこまめなアドバイスを送ることができると考えています。ゆくゆくは、AIを組み合わせて授業内容を分析するなど、さまざまな応用もできそうです。キヤノンMJさんは、いつも私たちの想像を超えた提案をしてくださいますし、その積み重ねで今の信頼関係があると思っています。今後も、私たちが目指す本質的な教育の実現に向けて、共に取り組んでいただきたいと考えています」と千葉さんは話す。
その信頼に応えるべく、これからもさまざまな提案をしていきたいと竹内も意気込む。
「早稲田アカデミーさんと共に教育現場のアップデートに挑戦し続け、子どもたちの豊かな成長、より良い社会をつくる人材の育成に貢献していきたいと考えています。そのために、私たちキヤノンMJの総力をかけ合わせ、これからも想像を超えるご提案をし続けます」(竹内)
未来をつくる礎(いしずえ)となる教育現場。社会のニーズに応えていくためには、教育への情熱と技術を結びつけ、現場を革新し続ける必要があるだろう。早稲田アカデミーとキヤノンMJの二人三脚の挑戦に、今後も期待したい。
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