このページの本文へ

InterBEE Canonイベント出展レポート

Broadmedia&Entertainment Inter BEE 2024 11.13(水)~(金) 幕張メッセ

今年で60回目の開催となるInter BEEは、音や映像、通信に携わるプロフェッショナルに向けの、日本最大級のイベントです。1,058の企業・団体が出展した幕張メッセの会場には、のべ3万4,000人近くの来場者が訪れました。キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンは、映像制作のパフォーマンス向上への寄与をメインテーマに画期的な新製品やソリューションを展示しました。

カメラマンの能力を拡張する「キヤノンマルチカメラオーケストレーション」

近年、ネット配信の広がりにより、これまでにはなかった映像制作・配信のニーズが高まっています。例えば、中小規模の音楽ライブや、高校野球の地方予選のように少数ながら熱心な視聴者がいるスポーツ、さらには企業が行うイベントやウェビナーの配信などです。
そうした映像制作に共通する課題は、予算や人員確保の問題からカメラを複数台用意することが難しいことですが、カメラが1台しかないとどうしても映像が単調なものになってしまい、視聴者の期待に応えられません。
そうした課題の解決を目指してキヤノンが開発したのが、今回、参考展示という形ながら、実際にデモンストレーションが行われた次世代の映像制作システム「キヤノンマルチカメラオーケストレーション」です。
デモンストレーションでは実際に、1台のメインカメラと2台のリモートカメラの計3台のカメラを用意し、テレビ番組などにあるような「対談シーン」の撮影を行いました。そこで実際に撮影するのはメインカメラを扱うカメラクルー1名のみ。残り2台のカメラはいずれもリモートカメラですが、まるでアシスタントクルーが操作しているかのように、メインカメラの動きと連動して自動で別の映像を撮影していました。
こうした動きは、専用アプリケーションによってあらかじめ2台のリモートカメラに対して、それぞれ「メインカメラと同じ被写体を映すのか、異なる被写体を映すのか」「メインカメラと同じ構図で映すのか、異なる構図で映すのか」といった撮影ルールを設定しておくことで実現しています。メインカメラのパン・チルト・ズームの状況を検知したアプリケーションは、ルールに則ってそれぞれのリモートカメラに命令を出しているのです。このプロセスにはAIの学習データが使われるため、学習が進むにつれてより複雑な運用も可能になります。
「キヤノンマルチカメラオーケストレーション」は映像の現場の効率化や省人化を推進する一方で、今まで難しかったアングルからの映像など、これまでにはない「まったく新しい映像表現」を実現します。

キヤノンマルチカメラオーケストレーションのデモでサブカメラとして使用されたリモートカメラ「CR-N700」
メインカメラ+サブカメラ2台の画像。サブカメラがどのような動きをするかは、あらかじめ設定しておく

放送・映像制作の分野でも注目が高まる「リモートカメラ」

キヤノンブースでは、多様なシーンで利用が進む「リモートカメラ」の展示も行いました。リモートカメラとはインターネットを経由してカメラを、パン・チルト・ズームさせる機能(PTZ機能)を搭載し、遠隔撮影を可能にした映像機器のことです。これまで主に管理や防犯、会議や教育といった現場で使われてきましたが、近年は画質が向上し、AFや自動追尾などの機能が大きく向上したこともあって、放送や映像制作の現場でも積極的に使われるようになってきました。
中でもキヤノンのリモートカメラの上位機種は「4K/60P/4:2:2/10bit」の高品位な映像撮影に対応した光学15〜20倍(フルHD撮影時に約30倍に対応した機種もあり)の高倍率ズーム機能や、レンズ交換式カメラの「EOSシリーズ」などにも採用されている「デュアルピクセルCMOS AF」、さらには高精度な自動追尾機能を備えたオートフォーカス機能を搭載しています。さらには、前述の「キヤノンマルチカメラオーケストレーション」のような新しい撮影システムへの応用が期待されることもあり、大きな注目を集めています。リモートカメラの操作には「リモートカメラコントロールアプリ」を利用し、標準で利用可能な「Lite版」と、機能の豊富な「有償ライセンス版」があります。

多彩なラインアップを展示

新時代の放送用レンズとこれからの映像表現を担うシネマカメラ

国内初出展製品を含むキヤノンの豊富な映像制作機器も展示しました。中でも放送用レンズの新製品である「CJ27e×7.3B」(2024年8月発売)と、シネマカメラの新製品「EOS C400」(2024年9月発売)、「EOS C80」(2024年11月発売)は、多くの来場者の注目を集めました。
「CJ27e×7.3B」は7.3mmから197mmと約27倍の望遠撮影が可能な、4K対応のポータブルズームレンズです。画面中心から周辺部まで均質な高解像力とコントラストを実現しながら、より「広く」、そして「遠く」まで撮影できる利便性を兼ね備えているのが最大の特徴で、スタジオでの撮影からロケでの撮影まで、幅広く利用できるレンズです。
「EOS C400」と「EOS C80」は、近年、世界的に市場規模が拡大しているプロフェッショナル向けシネマカメラの最新機種です。「EOS C400」は放送局や映画、ドラマなどの規模の大きな制作現場向けの上位モデルで、「EOS C80」はソロオペレーターやミラーレスカメラからのステップアップユーザーをターゲットとした小型軽量モデルです。いずれも6K撮影に対応した、フルサイズの裏面照射積層CMOSセンサーを搭載し大型センサーならではの解像感とシズル感のあるシネマチックな表現を実現する高性能カメラです。
なお、「EOSシリーズ」共通の「RFマウント」を採用することで、高精度なオートフォーカスを実現しているだけでなく、撮影画角を調整する「フォーカスブリージング補正機能」を備えている点や、レンズ・カメラ間の高速かつ高精度な「データ通信機能」を活用できる点も注目です。

「CJ27e×7.3B」と組み合わせた放送用カメラ
「EOS C400」は高性能な上位機種
「EOS C80」は小型軽量が魅力

インカメラVFX環境を効率的に実現する「キヤノンバーチャルプロダクションシステム」

映像業界向けのソリューションとして、「キヤノンバーチャルプロダクションシステム」の実演展示も行いました。これは近年、映画やドラマ、ニュース番組などのテレビ放送でも使われ、映像業界で大きな注目を集めている「インカメラVFX」機能を、より効率的に実現するための画期的なソリューションです。最新のシネマカメラである「EOS C400」「EOS C80」と対応の「RFレンズ」の組み合わせで実現するものです。
インカメラVFXとは、演者とCGの背景とを合成するシーンを撮影する際に、グリーンバックの代わりに大型のLEDディスプレイ(LEDウォール)を用意し、そこに合成する3DCGや実写素材を映し出す撮影手法のことです。LEDウォールに映し出される背景映像はレンズのズームや歪みデータを、さらにはカメラの向きや傾きなどを反映してリアルタイムに変化させることができるため、演者やカメラマンにとってもどういう画になっているかが分かりやすいという、大きなメリットがあります。
従来のインカメラVFXでの撮影には、カメラで撮影している映像と背景映像とのズレをなくすための、レンズとカメラの「キャリブレーション」を正確に行う必要があるため、その調整に手間がかかるだけでなく、必要となる機材が大幅に増えてしまう問題点がありました。
「キヤノンバーチャルプロダクションシステム」では、そうした調整や準備の負担を軽減し、映像制作の質と精度を向上させるだけでなく、現場の作業効率向上にも大きく寄与します。「RFマウントシステム」の電子接点を利用することで、レンズとカメラの情報をリアルタイムに通信・演算できるため、キャブレーションが自動化されるだけでなく、カメラからの情報出力もイーサネットケーブル1本で行えます。
今回展示したソリューションでは、Mobeon株式会社が提供する、カメラ自体の位置データをトラッキングするシステムと、キヤノンバーチャルプロダクションシステムを連携させることで、可搬性や機動力のある仕組みを構築し、より簡易にインカメラVFXを実現する仕組みを紹介しました。

LEDウォールと組み合わせた「キヤノンバーチャルプロダクションシステム」
ケーブルの本数が少なくてすむのが特徴の1つ

SNSやYouTubeなどを活用した配信の広がりによって、さまざまなジャンルから映像制作への参入が進み、成長著しい映像の分野。こうした成長著しい分野において、これからもキヤノンは「これまでに見たことのない映像」の世界を切り開いていきます。今後もキヤノンの映像への取り組みにご注目ください。