最新のデジタル技術と、伝統工芸の技の融合により、
日本の貴重な文化財の保存と文化醸成に寄与
昨今グローバル化や来日外国人の増加など、急速な社会変化に伴い、時代を超え受け継がれてきた独自の日本文化が再認識され、その魅力を国内外へ積極的に発信していこうという動きがあります。
わが国が誇るべき日本の美を、人へ、未来へ、伝えていきたいー
そんな想いから2007年にスタートしたのが、「
本プロジェクトは、日本古来の貴重な文化財の保存と、高精細複製品の活用を目的として、キヤノンならびに特定非営利活動法人 京都文化協会が共同で行っているものです。
キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の 匠 たくみの技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など日本古来の貴重な文化財の高精細な複製品を制作。そうすることで、オリジナルの文化財はより良い環境で保存され、未来へと継承されていきます。また、高精細複製品が多くの人に貴重な文化財と接する機会を提供することで、日本文化の再認識へとつなげることも可能です。
オリジナルに限りなく近い高精細複製品の制作に、
キヤノンの技術が生きる
高精細複製品は、次のようなプロセスで制作されています。
屏風・襖絵を始め、日本古来の貴重な文化財を、まずはキヤノンのデジタル一眼レフカメラにより多分割で撮影します。
そこで得られた高精細デジタルデータにさらにキヤノン独自の高精度な色補正処理を施した上で、キヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」を活用して原寸大に印刷。
これに、必要に応じて伝統工芸士が金箔や表装を施すなど、デジタル技術と伝統工芸を融合させ、オリジナルの文化財に限りなく近い高精細複製品を完成させます。
こうした過程では、キヤノンの最新技術が大いに生かされています。
多分割撮影を可能とする独自開発のソフトウエアでは、精度0.1度で旋回台の動きを制御。撮影データは、レンズ収差による、ひずみやゆがみが緻密に補正され、画像処理時の劣化も最小限に抑えられます。
また、キヤノン独自の高精度なカラーマッチングシステムを用いて、撮影環境の照明とあわせて画像処理し、その場で色合わせを行うことで、制作時間を大幅に短縮。オリジナルの文化財にかかる負担を軽減することに成功。
さらに出力のための大判プリンターは、日本古来の絵画ならではの繊細な濃淡や、陰影が生み出す立体感、経年変化までも、忠実に表現することが可能です。
制作のプロセス
STEP1.入力
独自開発のソフトウエアを用いて、デジタル一眼レフカメラ、旋回台、ストロボを自動制御して多分割撮影を行い、貴重な文化財の高精細デジタルデータを取得。
STEP2.色合わせ
キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用いて撮影環境の照明に合わせ画像処理を行い、その場で出力。すぐに忠実な色再現を実現。
STEP3.出力
高いプリンティング技術を誇る「imagePROGRAF」で出力し、繊細な質感を再現。使用する和紙や絹本は、綴プロジェクトのために独自に研究開発されたもの。
STEP4.金箔、
金泥
、
雲母
伝統工芸士の熟練の手技により、日本の文化財の最大の特徴である金箔、金泥、雲母を再現。経年変化の色までも表現。
STEP5.表装
京の職人に伝承されてきた確かな表装技術と表具により、オリジナルの文化財に忠実に再現され完成。
複製品の活用により、日本文化の醸成につなげる
これまでに制作された51作品(2019年12月時点)は、文化財の所蔵者や博物館、地方自治体などへ寄贈され、広く一般に公開されています。さらに、日本の歴史や文化を伝える生きた教材として、さまざまな場面で活用され、全国の小・中学校での出張授業や博物館での体験型展示など、従来のデジタルアーカイブにとどまらない新たな試みを進めています。
2019年10月には、公益社団法人 企業メセナ協議会が主催する「メセナアワード2019」※において、特別賞「文化庁長官賞」を受賞。NPOや行政と連携し、幅広い層により深い文化体験ができる機会を創出していることや、技術力を進歩させ、時代の流れを捉えた活動の広がりと厚みにより、文化の発展に寄与していることが評価されました。
-
※
メセナアワードは、企業によるメセナ(芸術・文化振興による豊かな社会創造)の充実と社会からの関心を高めることを目的に、企業メセナ協議会により1991 年に創設。以来、前年度に実施されたメセナ活動を対象に選考および表彰が行われています。
これからも私たちは、先進の技術を生かし、貴重な文化財の保存と普及活動を推進することで、日本文化の継承と発信に
貢献していきます。
-
※
2020年1月掲載
関連情報
- キヤノンの社会貢献活動
取り組み一覧
-
episode 01安心・安全をめざす横浜を見守るネットワークカメラ
-
episode 02ネットワークカメラAIが、イチゴの収量の自動予測を可能に
-
episode 03写真やプリントすることの新たな価値を提供
-
episode 05金融業界の急速な変化に対応したソリューションで、業務効率化と営業力強化を実現
-
episode 06先進のイメージング技術で、世界遺産を“映像遺産”として記録する
-
episode 07ICTの活用が新たな“学び”の形を生み出す
-
episode 08キヤノンのイメージング技術と伝統工芸の技で伝える日本の美
-
episode 09先進のテクノロジーを活用し高精度な点検とインフラ維持管理の高度化を実現
-
episode 10数理技術などを活用したITソリューションが、食品ロス削減にも寄与
-
episode 11「持続可能な社会」を目指す、キヤノンの資源循環型社会実現への取り組み
-
episode 12ITと豊富な業務知識を生かしたソリューションが、広域自然災害による被災者支援の迅速化に貢献
-
episode 13模倣品対策に貢献するクラウドサービスが、お客さまの“安心・安全”と信頼性向上に寄与
-
episode 14「EOS」最高解像性能を実現する新たな「5」が撮影領域のさらなる拡大を実現
-
episode 15お客さまの多様なニーズに応えるテレワークソリューションが、課題解決と生産性向上に寄与
-
episode 16巧妙化する脅威に対し柔軟に対応する「デジタルセキュリティソリューション」が、お客さまの課題解決に貢献
-
episode 17「数理技術」の活用で、物流の効率化や食品ロスの削減など、企業が取り組むべき社会課題の解決に寄与
-
episode 18MRシステム「MREAL」を中核とした「xRソリューション」でものづくりの現場を支える新たなインフラを提供
-
episode 19データマネジメントのワンストップサービスで、
企業のDX推進を支援
-
episode 20デジタル化の関門「契約業務」電子化をフルサポート
-
episode 21大学教育の質向上を支える教学マネジメントの基盤を提供
-
episode 22重要な社会インフラであるデータセンターが新たな価値を提供