モバイル、IoTの普及で大量かつ多様なデータを活用できる環境が整い、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められています。そんな中、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)が取り組んできた「数理技術」と呼ばれる手法が持つ可能性に注目が集まっています。
昨今企業を取り巻く課題はますます複雑化しています。少子高齢化の進行であらゆる業界・業種で人手不足解消のため、業務の抜本的な効率化が求められています。例えば物流業界はドライバー不足などの課題を抱えていたところに、“巣ごもり需要”の高まりを受けたネット通販の利用拡大などで物流量は増大しており、商品配送計画体制の見直しが急務になっています。
また、SDGs(持続可能な開発目標)で持続可能な生産や消費形態を確保することが目標の一つとして掲げられているように、企業は自社の利益のみを追求すればいいわけではなく、地域の人々と共生し貢献していくという社会的責任も果たしていかなければいけません。
一方、ITを中心としたテクノロジーの動向に目を向けると、モバイルやIoT(モノのインターネット)の普及が進み、かつてないほど大量、かつ多様なデータを入手できる環境が整っています。こうしたデータを最大限に活用しながら最適解を導いていくことが、企業が先述のような課題を効果的に解決するアプローチとなります。
そうした中、注目が集まっているのが、企業が保有する人や設備の資源を効率よく運用するための「数理技術」です。
「数理技術」は学術的にはオペレーションズ・リサーチ(Operations Research/OR)と呼ばれ、1930年代の英国における防空体制の研究が起源だといわれています。第二次世界大戦後には平和目的に活用されるようになり、企業が保有する人や設備の資源を効率よく運用する手法として、主として鉄鋼、石油、ガスなどの大規模装置産業を中心に発展を遂げてきました。
現在、コンピュータ技術の進歩と合わせて、「数理技術」の適用分野はさまざまな業界へと広がり、スマートフォンの乗換案内アプリ、コンビニの需要予測や店頭発注、無駄な端切れを出さない製品パッケージの切り出しパターンなど、日常生活の身近な場面でも数多く使われています。
「数理技術」を活用したキヤノンITSのソリューション
今注目を集めている「数理技術」ですが、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)でも、長年にわたり「数理技術」への取り組みを続けてきました。キヤノンITSで「数理技術」に取り組んでいる数理技術部は、1960年代に住友金属工業の中央技術研究所オートメーション研究室に立ち上げられたORグループを前身としています。鉄鋼生産における設備運用の効率化、計画の最適化をテーマにした活動をスタートした後、活動領域を鉄鋼以外の分野に広げ、社外のお客さま向けの提案、システム開発、コンサルティング活動を展開してきました。現在は、キヤノンITSにおいて、コンピュータ工学/ソフトウエア工学、映像認識技術、自然言語処理技術と並ぶ柱の一つに位置付けられています。
その中で特に注力しているのは、データを解析して問題点の可視化や知見の発掘を可能にする「データ分析技術」、複雑な方程式を解くことで問題に対する最適な解を求める「数理最適化技術」、仮想空間に現実の物事を再現して効果的なルールを見つける「シミュレーション技術」という三つの手法です。これらを問題解決の局面に応じて柔軟に使い分けたり組み合わせたりすることで、お客さまの課題を解決しています。
キヤノンITSは、これまで「数理技術」への取り組みで得た知見とノウハウに基づいたソリューションも提供してきました。
ロジスティクス分野での業務効率化を支援するソリューションの「RouteCreator(ルートクリエイター)」もその一つです。実績データを基に配送の最適化シミュレーションを実施し、各種の条件を加味したチューニングを繰り返しながら、個々の状況に合わせた配送計画を作成。配送効率化によるコスト削減を実現します。
また、需要予測・需給計画ソリューションの「FOREMAST(フォーマスト)」は、「数理技術」を活用した需要予測に基づいて在庫補充計画および需給計画を支援し、欠品なき在庫削減に貢献します。食品ロス削減へも貢献できることから大手食品メーカーなどの製造業からのニーズが高い本ソリューションですが、その他の社会課題の解決にも貢献します。例えば、商品パンフレットの需要予測を行いながら適正量のパンフレットを適切なタイミングで印刷することで、紙資源の無駄遣いを減らすといった活用もされています。
顧客に寄り添った課題解決が「数理技術」活用の大前提
「数理技術」の活用により、既存の業務に潜在しているさまざまな無駄を省いて効率化し、SDGsの精神に沿って社会に貢献しながら持続的成長の礎を築くことができます。その意味で「数理技術」の活用は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の出発点になるともいえます。
ですが、「数理技術」はあくまでも手段・手法であり、この技術を活用すること自体が企業にとっての目的ではありません。キヤノンITSにおいても「数理技術」の活用で大前提としているのは、お客さまに寄り添い課題を解決することです。どうすればお客さまの業務を効率化してコストを削減したり、働き方を変えたり、売り上げを伸ばしたりできるのか。この点を常に念頭において提案やサポートを行っています。
こうした姿勢が高く評価され、「数理技術」を活用したソリューションは多くの顧客から信頼を獲得しています。ビジネスの在り方も非対面が中心になるなど、世の中は大きく変わろうとしています。ニューノーマルの時代に向け、今後もお客さまと共に歩みつつ「数理技術」の新たな可能性を模索し続けていきます。
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2021年6月掲載
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