画像はイメージです
高精細画像が近年高まる
インフラ構造物点検へのニーズに応える
巨大な橋などが突然崩れ落ちる。近年このような様子が報道され、世界を驚かせています。
一方、日本でも同様の被害が懸念されています。橋梁やトンネルなど、現在の社会インフラ構造物は、高度経済成長期に建設されたものが多く、今後急速に老朽化することが予想されているのです。
国土交通省が定める定期点検は、近接目視※を基本としています。土木技術者が近接目視でひび割れを確認し、スケッチした点検結果からデータを作成。多いときには構造物ひとつあたりで数十万本にも及ぶひび割れを手作業で記録するため、膨大な時間とコストがかかります。
場所によっては足場を組む必要があり、コストはもちろん、安全面でも課題を抱えており、さらに今後は、少子高齢化により、点検人材不足も深刻化するといわれています。
このような背景から、国土交通省は2019年に橋梁とトンネルの点検要領を改訂し、高精細画像を使用した点検など、近接目視と同等の診断を行うことができる方法による点検作業も認めました。高精細画像で記録することにより、近接目視点検では発見することが難しいわずかな変状も発見でき、劣化の兆候をいち早く察知することが可能なったのです。
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肉眼により部材の変状等の状態を把握し評価が行える距離まで接近して目視を行うことを想定。(平成26年6月 国土交通省道路局「道路橋定期点検要領」)
イメージング技術とITの活用により、高精度・高効率の点検を可能に
こうした中、私たちキヤノンは、長年培ったイメージング技術とITを活用した、画像ベースインフラ構造物点検サービス「インスペクション EYE for インフラ」を提供しています。
本サービスは、画像点検に長年の実績を持つ株式会社東設土木コンサルタント(以下、東設土木コンサルタント)との連携を通じて実現したもので、「高精細画像撮影」と、「画像処理技術」、AIを活用した「変状検知」という3つのサービスから構成されています。
「高精細画像撮影」は、キヤノンの豊富なカメラ・レンズ群と自動撮影雲台やドローンなどの撮影機材を活用し、豊富な撮影ノウハウを生かすことで、多様な環境下でも高精細画像が取得可能に。これにより、幅0.2mmの細いひび割れも認識することができます。
次に、「画像処理技術」は、長年培った画像処理ノウハウを利用し、斜めから撮影した画像を正対化する「あおり補正処理」を行い、構造物を正面から見た画像にします。構造物の図面と撮影画像をぴったりと重ね合わせることで、ひび割れの正確な評価が可能になります。
また、壁面の前に柱などの遮蔽物がある場合でも、複数方向からの撮影画像を合成することで、遮蔽物を除去する、遮断物除去処理も実現します。
3つ目の「変状検知」は、キヤノンと東設土木コンサルタントによる共同研究に基づき開発した変状検知AIを使って、点検対象物の変状(ひび割れなど)を検知します。変状検知AIは細い幅のひび割れも検知でき、ひび割れと間違いやすい特徴が多くある汚れた壁面などでも、ひび割れだけを検知することが可能です。
さらに、東設土木コンサルタントと有限会社ジーテックが開発した変状展開図作成・管理支援ツール「CrackDraw21」とのデータ連携により、AIによる変状検知結果はCADデータとともにデータベースで管理することが可能です。
点検調書の作成や補修計画の策定など、実務への展開が容易になるため、業務の効率化を実現するとともに、点検結果のバラツキを防ぐことができます。
先進のテクノロジーを活用し、社会課題の解決に貢献する
今後さらに建設後50年を経過するインフラ構造物の割合は急速に増え、日本でも、50年を経過する橋(橋長2m以上)は、2018年3月に約25%だったものが、2033年には約63%へと増加します。
一斉に老朽化が進むインフラ構造物を安全に維持していくため、画像ベースの点検による作業効率化には大きな期待が寄せられています。さらに、画像と点検結果をデジタルで管理することにより、データ管理コストの削減や、早期の問題発見が可能になるなど、多くのメリットが期待されています。
これからもキヤノンは、点検作業の高度化・効率化や安全面の向上といった現場のニーズに応えるとともに、イメージング技術とITによるソリューションを定期点検だけでなく施工・維持管理など幅広く展開し、社会インフラ業界全体に貢献していきます。
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2020年2月掲載
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